とりあえず目標の第3回に辿り着きましたわ。いやでも冊数少なくても週に1回更新の方がいいのかとか色々と考え中です。どう思います? こうあれこれ悩むのは開設したての方向が定まってない時のお楽しみのような気します。というのもあれなんですよ。先日2月22日に個人サイトcolorfulが開設20周年を迎えました。私自身がまだ振袖を着られる身の上なんですけど、実質我が子のようなものです。

ゴールデンタイムの消費期限 斜線堂有紀

書けなくなった「元天才作家」高校生の綴喜文影に元に届いたのは「レミントンプロジェクト」への招待状だ。紹介してくれた編集小柴によればこれに参加すればまた書けるようになるということだった。
ヘリコプターに乗せられ辿りついたのは山中にある施設だ。個人のスマートフォンは持ち込めないようになっており、11日間をともに過ごす5人と引き合わされた。料理人、バイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士。綴喜も含めた6人に共通するのは「今は見る影もないがかつて天才と称された人間」だ。

レミントンプロジェクトとは人工知能「レミントン」とのやり取りでかつての天才に力を取り戻させるプロジェクトだった。
同世代で「かつて天才としてもてはやされたこともあった」という似たバックグラウンドや傷を持つ男女の交流と、AIの補助のもと自分と向き合う期間。このプロジェクトは閉ざされた密室で行われ、AIは6人の心を揺さぶり激しく取り乱させるが暴力沙汰や死者は出ない。綺麗な物語だ。
「AIが人間の仕事を奪う」「AIを利用することで広がる世界」など様々な可能性はきかれているが、作中のようなことは既に行われているのかもしれない。

電子書籍:○

金星特急 嬉野君

金星が花婿を探している。金星が選んだ男はこの世の栄華は思いのまま。花婿候補はどこからともなく現れた特急が金星の元へ運んでいく。そうして金星特急に乗り込んで無事に戻ってきた者は誰一人おらず、特急を追跡した者たちもすべて撃ち落とされた。
金星に一目ぼれした錆丸は入学したばかりの高校を中退し金星特急へ乗り込んだ。そこで出会ったのは腕は立つが不愛想で正体不明の砂鉄、大喰らいの美貌の騎士ユースタス。
金星特急が彼らを連れていくのはどこか、金星とは何者なのか。
世界を股にかけた冒険活劇金星特急。

さて約10年前に完結した本作をここで取り上げる理由はひとつ、来月3月10日、「続・金星特急 竜血の娘」が発売されるためです。

金星特急と地続きの物語であるためこれを読んでいるほうが圧倒的に解像度が高い。私は小説ウィングスで連載を追っているので内容を知っているので言いますが、本作においては「続編はコケる」「あれは越えられない」は全く適用外。
毎回金星特急らしい「頭をかち割られそうな驚き」と「冒険」と「世界を旅する空気」を楽しんでいます。今年一推しの一冊になるのは間違いない。できるだけネタバレを避けて既読者向けに叫びたいのですが、月氏が好きな人はこれを読んで面白かったら小説ウィングス本誌最新とひとつ前を買ってほしい。

電子書籍:○(※続・金星特急についても1カ月遅れで電書になる)

わたしの幸せな結婚 顎木 あくみ

斎森先妻の娘、斎森美代は継母・異母妹に虐げられて使用人同然に育った。母方の異能の血を受け継いで生まれたはずが見鬼の才を持たなかったことが大きい。
ある日、美代は久堂清霞の元に嫁ぐことになった。清霞は美しい容姿だが冷酷無慈悲、今まで何人もの女性が結婚を諦めて去っていったと美代の知るほどの噂の人物だ。それでも美代にはもう帰るところも行くところもない。実家は美代の唯一の味方幸次が異母妹と結婚して継ぐことになった。

王道のシンデレラストーリーでかつてコバルトを読んで育ってきた人間としてはかなり懐かしさを覚える作品。最初は人間不信全開の対応だった清霞と自責の念の塊の美代がじわじわと距離を縮めていく様がほほえましいです。

電子書籍:○

オタク女子が4人で暮らしてみたら 藤谷千明

エッセイ。
フリーライターという仕事上、30代後半とという年齢上付きまとう将来の不安。さらに階段から転げ落ちたり、パートナーと別れたり様々な不安が夜泣きという形で現れた。
不安解消案として考えた結果シェアハウスはありなのでは?? と考えた筆者藤谷さん、オタクルームシェアしない? とLINEで持ちかけ「面白いほうに5000点!」と話はとんとん拍子に進んでいく。すったもんだ―の後家を契約する時点で「10年来の友達の本名を知る」というのは実にオタクあるあるだと思った。

ルームシェアの体験談として非常に成功例だと思う。「気心の知れたフォロワーの近所に住んで推しの円盤を見たりマンガの貸し借りをしたり一緒にご飯を食べたりしたい」みたいなオタクグループホーム計画を夢見たことが一度や二度ある人は多いのではないか。
オタクはすぐガチャに例えるが、これは住居も友達も住人もガチャの引きが爆裂によかったと思う。なので汎用性があるハウツー本ではないしオタクグループホームにあこがれがありすぎる人は羨ましさで鬼になれそうな本だが良い読み物だ。
時期的にコロナ前~日本で感染者が増え始めたころのこと。

電子書籍:○(2/24現在電子書籍は400円弱で購入可能です)

仕事本

2020年4月、緊急事態宣言が出た東京在住の人たちはどのような風に仕事をしていたのか、という日記アンソロジー。有名な人も無名な人も。パン屋・タクシーの運転手・介護士・ホスト・漫画家・旅行会社の社員・専業主婦・CAなどなど77人が語る2020年4月。

コロナ初年の世界はどんな風だったのか、去年の春の首都圏はどんな風だったのか、という本です。
人の日記を読むのが好きな人に。