2021年3月

2 件

桜の季節がやってきました。地元でもようやく桜の開花が宣言され、福島県では聖火リレーが始まりスウェーデンでは世界フィギュア選手権が始まり今2020年じわじわ再起動してるなと思います。なんとか収束してほしい。

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 若林正恭

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自由に旅行ができなくなってから1年以上経ち、いつになれば旅行に行けるかもまだちょっとよくわからない。そんなわけで旅行エッセイを読む。これはオードリーのツッコミのほう、以前小説家と鼎談番組「ご本、出しときますね?」のMCをやっていた若林正恭氏だ。
氏は2013年のころ家庭教師を雇っていたそうだ。アラフォーだというのにニュースを見てもさっぱり理解できない。これは恥ずかしいのでは、と思いたち友人に紹介された。
そして自分の悩みの根源とは別のシステムで動いている社会主義国家キューバへの旅行を決めた。2016年6月のことだ。

本越しではあるがキューバの人がどのように暮らしているのか垣間見える。
配給所があり飢える心配はない、でも最近それでは足りずスーパーでも買っていること。
国営企業のためスーパーで売ってる調味料はどれも2種類程度であること。
職業訓練がしっかりしており、ウェイターからスポーツ選手までなりたい業務の専門学校を卒業する。でもコメディアンになりたい人間が学校を出た後バイトで食いつなぎながらデビューを狙うということはあまりないこと。
就職は義務ではないが「アルバイト」という概念があまりないこと。
海がきれいなこと。
亡命は禁止されているが、身内に亡命者がいると生活が裕福になる矛盾があること(キューバから発送は制限があるが、キューバへ発送・送金は制限がなくスマートフォンも送ることができる)
異国の空気を感じることができる。それ以外に収録されているのはモンゴル・アイスランド。コロナ後の東京。

電子書籍:○

小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集 桜庭一樹

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東京創元社のWEBサイトで掲載されていた桜庭一樹読書日記がとても好きだった。書籍化されているものは各オンライン書店では注文できないか中古のみのよう。書店ではまだ並んでいるところもあるだろうか。この本はそれらを楽しみに待っていたころを思い出す本だ。
帯には約15年分の書評ということで、収録期間は2005年~2018年。最も多いのはリレー読書日記やあちこちで書評を書かれていた2006年~2009年の間で、書評以外では道尾秀介氏・冲方丁氏・綿矢りさ氏・辻村深月氏との対談も収録されている。
解説も収録されているが、その昔この解説を読みたいがために本を買っていたことも思い出されて懐かしい。桜庭さんが本の話をしているのが好きな人はぜひともオススメの1冊。

映画レビューと火の鳥の連載をやっていたことは知っているが最近は何か刊行予定あるんだろうかと検索してみたらコロナ禍の東京の日記が出るようだ。

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推し、燃ゆ 宇佐見りん

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第164回芥川龍之介賞受賞作。
直木賞ならともかく純文学対象の芥川賞受賞作を読もうとは普段あまり思わないが、本作は「アイドルを推す」ことを生活の中心に置いている女子高生の物語と聞いて俄然興味を持った。
いかにも大衆、という感じのそういうものが純文学で題材として扱われるのか、と思っていたら「芥川賞は時代を映す鏡」という話を目にし、ジャニーズのアイドルやNiziUやowvのようなアイドル、それに「推し」「推す」と言われる対象が人にとどまらず食べ物や企業にまで及んでいる現在ならそれもそうかと思った。

物語は「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」の一文で始まる。
虫の知らせか早朝に目が覚めたあかりはざわつくSNSで推しが起こした事件を知る。

推し:男女混合アイドルグループ所属上野真幸
推す:女子高生あかり。ファンのスタンスとしては現場には行く、でも特定はされたくない。有象無象の拍手や歓声のひとつでいたい。推しの見る世界を見たい。
あかりは推しのためならバイトも頑張る。推しの情報を集めてルーズリーフにまとめて咀嚼して自分の解釈をブログに書き連ねる。その経過であかりのブログは人目を集め同じグループ推しの友達ができた。推しに対する解像度を高め、その強固さは推しと同じグループのメンバーも舌を巻くほどだった。
しかし「推しがファンを殴って炎上」のニュースはどう解釈すればいいか分からない。自分の解釈では推しは穏やかな人間ではないが、人を殴るような人間ではない。怒ればいいのか、庇えばいいのか、SNSで目にする感情的なファンを眺めて嘆けばいいのか分からない。でも今後も変わらず推すことだけは決めていた。

あかりの生活はすべて推しを中心に回っていた。世界の人々が難なくこなせる生活も人生の彩りも自分はままならない。しわ寄せに苦しみながらも生活のすべてが推しに集約されていく。淡々とした語り口とは対称的に「オタクのすなるSNSでのふるまい」の描写は濃厚だ。どこかでアイドルが、若手俳優が炎上するとみられがちな光景が再現されている。

次元を問わず人物を推してファン活動をしたことがある人なら理解できすぎてしまう物語だと思う。

電子書籍:○

腐男子先生!!!! 瀧ことは

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「推し、燃ゆ」は重いので、「重い」方向性が違う「推しとオタク」の物語も紹介する。

女子高生の早乙女朱葉は漫画を描いて本を作って同人誌即売会イベントへサークル参加する腐女子だった。ある日のイベントでノベルティを渡し損ねた男性を追いかけ、彼が自分の学校の先生であることに気がついてしまった。
これは女子高生(腐女子)と教え子を神だ推しだと崇める先生(腐男子)のラブコメです。
その時に流行ったオタクコンテンツの話題がそれとなく振りまかれているのでネタ元を頭の中で転がしながら読むのもよし(分からなくても面白さは減りません)コミカライズから入るのもよし、元が小説家になろう掲載作品のため隙間時間に読むのもよいでしょう。

書籍版完結済全3巻

電子書籍:○
小説家になろう:腐男子先生!!!!!(書籍版未収録作品あり)
コミカライズ:腐男子先生!!!!! – pixivコミック

死んでも推します!!~人生二度目の公爵令嬢、今度は男装騎士になって最推し婚約者をお救いします~ 栗原ちひろ

「推し、燃ゆ」とは違う方向の「推しを推す」物語のご紹介です。これはこれから書籍化されるオンライン小説作品で、異世界ファンタジーでコメディ要素が大分強いラブコメです。

公爵令嬢セレーナの推しは自分の婚約者だ。はじめて出会ったのは10歳の時に見せられた肖像画だった。見た瞬間天使がラッパを吹いて祝福した。私は「萌え」という概念を取得した。16歳の結婚が近いある日、婚約者ともども炎に巻かれそこで意識は途絶えた。次に意識がはっきりした時、自分は生まれて1年未満の赤子に戻っていた。
どうして自分がまた2度目の生を受けているのかは分からない。だけど今度こそは「推し」を死なせない、婚約者でなくて構わない彼の身を守れるなら。
そうしてセレーナは男装を身にまとい「推し」フィニスの剣になることを決めた。

こちらも小説家になろう掲載作品で、書籍化とコミカライズが決まっています(※発売日未定) 講談社Kラノベブックスfで刊行予定。

略称「でも推し」は去年6月から9月中旬にかけてほぼ毎日連載されていた全100話の物語です。毎朝ひと笑いしてから仕事についていました。書籍版は現在リライト中とのことで、手元に届けられる日を楽しみに待ちたいと思います。

小説家になろう:【書籍化】死んでも推します!!~人生二度目の公爵令嬢、今度は男装騎士になって最推し婚約者をお救いします~

広大な領地をもつルトヴィア帝国。猟師の娘として暮らす少女・カリエは、突如謎の男に攫われ、皇位継承者候補である王子の身代わりとして宮殿に入ることに――。カリエを待ち受ける激動の運命の行く末は? 
須賀しのぶが書く『流血女神伝』シリーズは、コバルト文庫史上に輝く、伝説の大河ファンタジーです。
このたび、シリーズ第1作となる『流血女神伝 帝国の娘』の初コミカライズが決定。(作画:窪中章乃 キャラクター原案:船戸明里)小学館の漫画サイト『サンデーうぇぶり』で4月5日から、雑誌『サンデーGX』で5月号(4月19日発売)から連載されます。
WebマガジンCobaltでは、『流血女神伝 帝国の娘』のコミカライズを記念して、原作小説のプレイバック連載を4月2日(金)から実施する予定です。どうぞお楽しみに!

3/19現在次号予告 | サンデーGENE-X|小学館でカリエの顔が見られますが、原作カリエと比べれば幾分可愛い系の顔をしているなと思いました。
流血女神伝は角川文庫では「帝国の娘」のみ上下巻で発売されていますが、原初のコバルト文庫では「帝国の娘」以降も話が続いています。全25巻です。カリエはジェットコースターに乗せられたがごとく数奇な運命をたどります。大変おすすめです。
古い作品なので古本と図書館以外で手に入れるのはちょっと難しいかも知れませんが、電子書籍化もされています。

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