カテゴリー「 紹介 」の記事

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年末年始から都会ではさらに感染者急増、長らく感染者0が続いていたわが県でも年始から帰省土産コロナにはじまって随分感染者が増えに増えて「同僚の家族が濃厚接触者」ぐらいの身近さになりました。エヴァも公開延期になったし落ち着くまで引きこもって本を読んで配信ライブを見ようかという今日この頃です。田舎なので入院170人で病床使用率50%超えてしまう。
今年のやりたいこととしてグラフィックレコーディングとカリグラフィがあってここでやることにしました。
まあでかいポップですね!

それでもあなたは回すのか 紙木織々

[amazon asin=”4101802041″ kw=”それでも、あなたは回すのか (新潮文庫)”]

お仕事小説のいいところは「こういう感じなのかなー」って職業疑似体験できるところだ。本作はソシャゲをたしなんでいる人が読むと、いつもやってるソシャゲの運営会社の苦労が垣間見れる。

文学部卒の友利晴朝(「はるとも」なのであだ名はハト)は株式会社アローンズゲームスの内定をゲットした。ハトの所属は業界では花形だと呼ばれる「自社運営のソシャゲチーム」第1事業部の2チームの片割れ、「アローンズゲームスで最初に売れたソシャゲ、8年経った今は赤字を垂れ流すサービス終了待ったなし」の「タクティクスソウル」チーム。プロジェクト名から「タクト」と呼ばれる方だ。

ソシャゲをやっていると深夜帯から緊急メンテナンスがはじまることもあり、中の人の心配をしてしまうが、ハトの会社はかなりホワイト企業だ。ハトはプランナーとして入社して教育係の安村さんから、不安点を聴取したうえで「いずれはユーザーサポートもやってほしい。そのためにはまずユーザーと同じ目線に立つ必要があります。あなたの仕事はまずタクティクスソウルをプレイすることです。具体的にはこれを達成してください」とリストが渡される。残業しようとするそぶりを見せようものなら「今はそんな急ぎの仕事を任せていません。残業は翌日の仕事に支障を与えます。何か理由があるなら傾聴しますが?」と定時退社を求める。トラブル対応時など、何事も例外があるのだが。

私のソシャゲ経験は片手で足りる程度の経験値だけど、それでもサ終(サービス終了)はいくつか経験している。サ終前の運営はこんな感じなんかなーと思って読んでいたら作者の方もハトと同じ「ソシャゲ開発会社のプランナー」であることを知った。となると作中のあのインシデントのあれは実体験もしくは本当にあった怖い話の可能性が? と思うと頭が下がる。雑談って重要だなと思う一作。

電子書籍:○

忘れじのK 半吸血鬼は闇を食む 辻村七子

[amazon asin=”4086803542″ kw=”忘れじのK 半吸血鬼は闇を食む (集英社オレンジ文庫)”]

ガブリエーレは20年ぶりにイタリア・フィレンツェに降り立った。ガブリエーレは幼いころから「黒いもや」が見えていた。他の人間には見えないと言われていたが唯一パオロだけは自分にも同じものが見えていると、お前は1人ではないと肯定してくれた。そんなパオロが病院の裏手で倒れており今も意識不明の状態だ。ガブリエーレはパオロが話してくれた「これは秘密だけど自分は神様の手助けをしているんだよ」と言っていたことからパオロの裏稼業に辿り着き、自らを「かっぱ」と名乗る半吸血鬼とともに事態の解決に乗り出す。
宝石商リチャードが好きな人にはちょっと読みづらいかもしれず、デビュー作螺旋時空のラビリンスが好きな人は好きかもしれない。

電子書籍:○

ぼくが13人の人生を生きるには身体がたりない。haru

[amazon asin=”4309249639″ kw=”ぼくが13人の人生を生きるには身体がたりない。: 解離性同一性障害の非日常な日常”]

これは「解離性同一障害」いわゆる多重人格について扱った本だけど、医学書ではない。創作でもない。これは現実に存在した、その疾患を抱えた当事者による本だ。

「疾患の治療法」「付き合い方」などは書かれてない代わりに大変読みやすく気軽に読める。
haruさんには12人の別人格があった。この本は別人格のすべてについて紹介されているが、本文中で語り部として登場するのは主に3人の人格だ。主人格のharuさんはあとがきに登場する。どういう風にして人格が生まれ、1日の動きがどうなっていて、診断名がつけられるまでにはどんな道のりがあったのか。そういうことが語られている。
あくまでもこれは症例のうちのひとつである。解説の精神科医岡野医師も書かれているが、発症の原因として語られがちな虐待の話は登場しない。破壊的で黒幕的な人格も存在しない。幸福な事例だったのだろうと思う。
haruさんは「直接会える解離性同一性障害の人」として活動されていたが、去年この世を去った。技術を悪用されtwitterアカウントは凍結されごく一部の文章がnoteなどに残されているのみだ。
この本を紹介したのはこういう人と交代人格たちが存在したこと、「人間には等しく24時間が与えられている」が当てはまらない人たちが存在することを誰かに伝えたいためだ。

20210315追記:haruさんは生きていた。なりすましではなく本人である。つい先日オンラインでの活動を再開された。当時「haruくんは遠い所へ行きました。ありがとうございました」とお友達からのツイート及び画像、予約投稿されていたと思われる遺書めいたエントリが上がっていた。しかし「遠いところ」には行っていたのは事実のようで、前と同じではない様子。

電子書籍:○

ダンシングプリズナー 遊木ユウ

[amazon asin=”4086803585″ kw=”ダンシング・プリズナー (集英社オレンジ文庫)”]

2020年度ノベル大賞準大賞受賞作品。ざっくりいうと「特殊設定の全寮制男子校ジュブナイル」。
どんな風に特殊設定かというと舞台は少年院で、でも普通の少年院と違って「演劇を通じて自律と協同を促す」月1ペースで舞台をやっている少年院だ。
舞台に向けての準備は毎日あり、直前になるとそれにかかりっきりになり公演に関することであれば院生はある程度自由に動くことが許され会話もOK、なんならトンカチのような武器になりそうなものの使用許可もある。すべては公演のため。本格的な舞台の上演は目標とせずあくまで過程が大事だとされ、「普通の演劇より感動できる」と一般人のリピーターもいる。

この少年院に入所してくるものは無作為に選ばれるため、年齢も犯罪歴もばらばらだ。
主人公は神連唯(かみつれ ゆい)14歳。3度の脱走を図り失敗して反省文を書かされているところから物語始まる。彼の罪名は殺人。ただし彼は無罪の罪でこの少年院へ送られてきた。
曼珠沙華煌(まんじゅしゃげ きらめき)という周囲の人間を惹きつけてやまない少年が入所してきたころから神連は徐々に変化していく。

神連が殺した相手とされている父親を殺した真犯人は、という話に流れていくけどその辺はハウダニット(どうやって殺したのか)に割かれていてこっちも「結果より過程が重要」って感じ。

オルタネート 加藤シゲアキ

[amazon asin=”4103537310″ kw=”オルタネート”]

2021年直木賞・本屋大賞ノミネート作。

オルタネートという「高校生限定個人認証済実名マッチングアプリ」が一般的な現代日本の、円明学園高校での群像劇。青春は大体キラキラしている。
私が高校生だった時というのはアプリどころかガラケーすら一般的な存在ではなく、ごく限られた人間だけがポケベルを持ち歩いているような時代だったけど、手段が違うだけで変わらないものもある。例えば文化祭とか部活とか。
本作は群像劇だ。料理の甲子園的な配信型コンテスト番組「ワンポーション」に出演したい調理部3年生の蓉(いるる)、オルタネートに詳しいガチ勢。でもアプリを通じて誰とも会ったことはなく、オルタネートが提案する「あなたと相性のいい人」90%以上の人が現れたら、その時初めて会おうとと思っている凪津(なづ)、高校を中退しオルタネートはもう使えなくなったが弟のアカウントを使って昔の友達を探し円明学園高校に忍び込んだ尚志(なおし)
この3人を中心に物語が動く。長編だけど視点移動に伴い細かく章分けされているのでちょっとずつ読み進めるのにも向いており、身近なテーマ(高校生の青春)なので本を読みなれない人にもおすすめ。

電子書籍:×(2021/1/25現在)

ハッピーホリデー!
きょう仕事納めの方ももうちょっと働く方も年末年始も変わらずお仕事の方もお疲れ様です。今日から本更新です。といってもあらゆるものが試運転のため、春先までは温かい目で見てほしいです。よろしくお願いします。
今月のおすすめ本は以下の5冊です。

有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿 2 /栗原ちひろ

[amazon asin=”4086803577″ kw=”有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿 2 (集英社オレンジ文庫)”]ヴィクトリア朝ロンドンを舞台にしたオカルトミステリー2巻。
緊急事態宣言発令後、都会の本屋が軒並み閉まって本が売れないどころかスタート地点にも立てない「悪夢の4月刊」のうちの1冊だったエリオット1巻に重版がかかったことが個人的に今年の数少ないドラマチックなことだった。

社交界で知らないものはいない心霊マニア、「幽霊男爵」という通り名さえあるエリオットと「自分は人形です」と称するコニーが心霊事案ですったもんだーします。心霊マニアとはあくまでも表向きの分かりやすい話で、エリオットは本当に幽霊が見え、10代のころは生者と死者を区別できず苦労していたことも。その時の話が2巻の1話で語られます。色恋沙汰はそう多くはありませんが顔のいい男といい感じの関係性(複数)はあります。短編形式ですが世界観にどっぷり浸れる系なので読みごたえ抜群。

電子書籍:○

竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事/夕鷺 かのう

[amazon asin=”4047364347″ kw=”竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事 (ビーズログ文庫)”]「自分を(物理的に)食べてほしい聖女見習いルーチェ」VS「意地でも食べたくない竜神オルフェン」

「私を食べてください」と異形の元へやってくる少女で連想される物語といえばLaLa本誌でコミカライズが絶賛連載中の紅玉いづき「ミミズクと夜の王」ですが、こちらとはいっそカテゴリ違いのレベルでコメディにステータスを振りきった物語です。ラブコメというよりはコメディ時々LOVE。
どのぐらいコメディかというと「オルフェン様の嫁とは思えないよくできた聖女だ」と言われて 「あの方の花嫁なんてそんな大それたものではありません。私はあの方専用のです」という問答をし、ことあるごとに「自分も食べませんか」と誘い、「私という肉がありながらどこの肉とも知れぬ肉(※ウサギ)は食べるんですね」と言いつつ自分でウサギの解体をしオルフェンのお世話もする押しかけヒロインです。
あと結構珍しいなと思ったのはオルフェン(男視点)で「お前くっそ可愛いな??????」って思ってるシーンがたびたびあるところです。

電子書籍:○

寝屋川アビゲイル黒い貌のアイドル/ 最東 対地

[amazon asin=”4065200016″ kw=”寝屋川アビゲイル 黒い貌のアイドル (講談社タイガ)”]アイドルグループNExTの人気投票で1位に駆け上がりセンターに抜擢された「るる」こと瑠璃丘類衣のアイドル人生はある日突如として終わりを迎えた。アイドルに戻りたい、でもこの顔のままでは戻れない。るるの顔は今黒いシミでおおわれている。

現代の医学では「異常は見られない」美容整形でも対応不可能と言われたるるが最後に流れ着いたのが「霊能者ブローカー」阿南だ。あの人ならなんとかできそうと言われて寝屋川までやってきた。一縷の望みを手繰り寄せてるるは東京から大阪は寝屋川市へとやってきた。この町は一味違う。東京は人にぶつかったとしても何も言われないが、この町は全身黒衣の自分を見て「カラスが寄ってくんで」だの「カオナシや」だの「暑ないんか」と話しかけられる。
るるの目当ては阿南の紹介でたどり着いた「アビゲイル」、アビーとゲイル。コンビの厄裁師だ。

帯には「新感覚ナニワホラー」って書かれているけど、人がなめらかに死んだり呪いとか死者とかそういうものが出てくるだけで「人が死ぬ物語」に抵抗がなければホラー耐性はなくても大丈夫です。具体的にいえば呪術廻戦が読めるなら大丈夫。
「あれ、なんでそんなこと言うの」っていうのがいい感じに伏線になってそういうことかーーーってなる感じの繰り返しなのでそういうのが好きな人にはお勧めです

電子書籍:○

蟲愛づる姫君の婚姻/宮野美嘉

[amazon asin=”4094066527″ kw=”蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)”]中華で年の差婚とかお前のことは女と見れないとか蠱毒とか呪いとかそういう要素が含まれています。幽霊伯爵の花嫁読者なら宮野美嘉があの感じで中華恋愛ファンタジーを書きました、で説明が済むんですがもうちょっと書きます。
斎帝国の第17皇女で15歳の李玲琳(り・れいりん)は、ボロをまとい地べたに這いつくばり、蟲を愛し蟲術を使い、それでいて黙ってさえいれば多くいる皇女のうち誰よりも美しい少女だった。彼女が愛する姉にして斎の女帝の命令で玲琳は新興国魁へ嫁入りすることが決まった。玲琳の夫となったのは楊鍠牙(よう・こうが)25歳。玲琳は鍠牙と初めて出会った時こう聞いた。
「お前は私のために金を使ってくれる男かしら」

玲琳と鍠牙は「新婚夫婦」という単語が想起される「甘さ」はなく、かといって政略結婚の無関心や冷たい素振りもなく、お互い我が強く個性も強く、でもお互いの主義は主張しつつ、お互いの主張もある程度は尊重する、のような「このふたりならでは」の夫婦愛が見られます。
たとえば玲琳が両手を広げると「抱きしめてあげる」という意思表示です。
現在既刊4冊、来年1月に新刊、2月には初の短編集の刊行が予定されています。

電子書籍:○

2.43/壁井ユカコ

[amazon asin=”4087452921″ kw=”2.43 清陰高校男子バレー部 1 (集英社文庫)”]

福井の弱小バレー部を舞台に春高を目指すスポ根小説です。
レンザブローでWEB連載されていたものが一定期間ののち書籍化されました。人気なので続編をやります、を今冬ついにノイタミナ枠でアニメ化します。
既刊は単行本のみだと4冊。最初の2冊は文庫化されていますが上下巻仕様なので全6冊。現在新シリーズがWEB連載されています。

一番最初の物語の話をすると、群像劇として描かれているある青春の物語です。
口は悪いがバレーに関してはきっちり褒める情熱溢れるセッター灰島と身体能力は高いがプレッシャーには弱い黒羽、女子バレー部員でかつてエース、今はぱっとしない茨ちゃん、健康上の理由で屋外で運動できない棺野くん、小さいキャプテン小田、小田のシンメ相棒青木。
「青春って眩しいなあ」と、大して輝いてもなかった過去を振り返りつつ沁みる1冊です。

2.43 清陰高校男子バレー部 ポータルサイトでは詳細なあらすじ、登場人物表も公開されているのでこちらもあわせてご覧ください。

電子書籍:○

次回のレビューは1月25日更新予定です。

はじめまして!
普段はcolorfulという読書感想系日記サイトを管理運営しているまろんと申します。
本当は15日にプレオープンのはずでしたが今日は「なにかをはじめるには良い日」だと聞いたので前倒しできょう開設します。なので、次お越しになる際は見た目や機能が変わったり追加されたりしているかもしれませんが、お、なんか変わったなあと思ってください。

とある秋がいい感じに深まった日の寝起きに「そうだWEBマガジンをやろう」と天啓のようにひらめいたので、本家とは別に立ち上げて読書系のWEBマガジンをはじめます。方向的にはダヴィンチより圧倒的に活字倶楽部です。活字倶楽部でピンと来ない方は弊ブログの読了カテゴリをぱらぱらとご覧いただければと思います。

更新頻度はとりあえず月1回25日をレビュー更新(その月の新刊や3か月内程度の作品、すごく古いやつで数冊取り上げる予定)します。続けられる範囲が分からないので春先ぐらいまではさぐりさぐりやっていきます。更新頻度は最低の場合で月1回ですが、上記colorfulはそれよりはもうちょっと更新しているので、書いている人のひととなりを知りたい方はそちらをご覧ください。

先日の少女小説ガイド配信で復刊とか刊行情報が手に入らないというコメントがありました。そういう情報収集先はいくつあってもいいだろうと思うのでそういう新刊ニュース系もとりあげようと思います。

取扱いジャンルですが
・ライト文芸
・ライトノベル
・エンタメ寄りの文芸
あたりで9割ぐらいになると思われます。主に女性向けの取り扱いです。
電子書籍はkindle(Amazon)を基準とします。
ちなみにBLについてはわたしが一穂ミチ作品と凪良ゆう作品以外はあんまり読まないので、取り上げるとしたらそのどちらかになると思います。
今現在特に推してる作家は栗原ちひろ・斜線堂有紀・有栖川有栖・辻村深月・竹岡葉月・紅玉いづき・野梨原花南・三浦しをん・加藤シゲアキのあたりです。
ファンタジーとミステリが好きです。密室殺人が好きです。ジャンプとガンガンとコバルト文庫と富士見ファンタジア文庫と電撃文庫と講談社ノベルスを読んで大きくなりました。

このWEBマガジンは私1人が趣味の延長でやります。今時点でおそらく内容は相当偏ることは想定されます。それにわたしが「これはWEBマガジンです」というだけで特にWEBマガジンのいろははこれから探っていく感じです。単に好きな作品を自由に推せる場所を増やしただけという話ですが、とりあえず春までは続けたいと思っていますので、応援の程よろしくお願いします。

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