今月は2冊の予定だったんですが、この本はあっちと一緒にしたいな……と思ったので、今月は1冊で、次回回しか1回飛ばした分臨時号を来月半ばに更新するか。様子を見ながらやっていきたいと思います。
全国的にコロナがだいぶ猛威を振るっていますがどうぞご自愛ください。

これは先日自己検査で陽性になった友達ほか、そんな感じのひとたちを仮想読者として書いたエントリです。
最近コロナが増えてきたので、「コロナ陽性診断されたけどどうしたらいいの」の話をしよう。 | colorful

石狩七穂のつくりおき 猫と肉じゃが、はじめました  竹岡葉月

埼玉県在住石狩 七穂(24)は新卒で入社した会社を早々に退職し、あちこち転々として今は正社員の職を求めて求職活動中だ。色々駄目で、安定を得ようとすると途端に難しくなる。今のところ一番続くのは「短期の派遣」という様で就職活動は難航している。
そこに2つ上のエリートのいとこが休職したという話を母から聞いた。ボストン生まれで中学受験で私立御三家へ合格。旧帝大を経由して就職先は理系就職人気ランキング常に上位の大企業に就職した結羽木 隆司が鬱だという。隆司の両親は海外赴任中で身動きが取れず、無職の七穂に白羽の矢が立ったというわけだ。
七穂の記憶に残るのは隆司の祖父が隠居目的で購入した築80年の伝統的な日本家屋「我楽亭」での日々だ。七穂と隆司の母親は仲が良い姉妹で、時折招かれていた。
そこで出会った隆司はとっつきにくく、頭は良いがあらゆるゲームで七穂を完膚なきまでに負けさせるちょっと仲良くなれないタイプの子だった。子どもの遊びをしなくなって以降は疎遠になった。隆司は今我楽亭でひとり暮らしをしているという。
最初はちょっと様子を見てかかわりを持つつもりはなかったが、七穂は我楽亭に行って何品か料理をして冷蔵庫にしまうというぼボランティア活動にいそしんでいる。求職者の休職者のための給食当番だ。

竹岡葉月の近作はどれも自炊や料理が関わっている者が多い。
本作もその例にもれず石狩七穂がその腕をいかして豚汁をベースに担々麺や和風ポタージュを作ったりする。食べて生きて、今後の人生を悩んだり再起をはかる物語なのだ。最近は「キャリアブレイク」という単語を聞くことがある。今後のスキルアップや自分を見つめなおし今後の人生を考える前向きな離職期間をいうのだという。
これは休まざるを得なくなった隆司と行く末が見えず休んでいるしかない七穂の「ちょっと長い、おとなのなつやすみ」で、夏休みを終えて2人の行く末を見守る物語だ。