9月は怪談とともにあった月間でした。

池袋裏百物語 明烏准教授の都市伝説ゼミ

「池袋裏百物語 明烏准教授の都市伝説ゼミ」(原作:紅玉いづき)という朗読現場+配信舞台がありました。本作は2日間昼夜4公演で、その昼夜で役柄交代がある舞台でした。
推し作家が原作で、普段ラジオでしか声を聴くことがない [1]声優であることは知っているが普段どういう作品に参加しているのかいまいち存じ上げない方々参加しているのならそれは聞くしかないでしょう。

のちに完売が伝えられた小説現代に原作が掲載されています。紙書籍の入手難易度はかなり高いと思いますが、電子書籍の販売はあります。

作中作の怪談はこちらでまとまっています。電子書籍オンリーです。

配信自体はアーカイブを含めてもう終了していますが、当時はリアルタイム配信以降アーカイブで10日ばかし聞けたので毎日のように聞いてました。
これも1冊にまとまってくれるとうれしいなあと思いつつ。

ゴーストリイ・サークル 呪われた先輩と半端な僕 栗原ちひろ

3月になってようやく大学の合格通知がきた浅井行は「今!?」と言われつつアパートを探し引っ越しを終えた。思えば行は幼い頃から半端に怪異が見えてしまう人間で、引っ越したその日奇妙な現象に襲われた。その状態の行を助けたのは上の階に住む先輩、出会って一目惚れした瀬凪ほのかで、彼女は除霊ではなく「怪異をやり過ごす」共存する方法を提案した。
瀬凪もまた見える人で、怪異に悩まされる立場の人間だった。

ホラーと銘打った文庫作品ですが、そこまでおどろおどろしい描写があるわけではありません。元々ビジュアルを想起しやすい文体の作家なので、多少不気味さを覚えるシーンはありますがこればかりは相性の問題だと思います。恒川光太郎作品が好きな人はたぶん大丈夫です。
本作のみ現状電子書籍はありません。

怪談徒然草 加門七海

実話系怪談集。体験なのでそんな「驚かせてやろう」みたいな話はなくて、「ちょっといい話」から「なにそれめっちゃこわい」まで収録されています。
わたしは「怪談が読みたい」と言われたらこの本をおすすめしているのですが、その理由は内容もさることながらこの本を読むと大変奇妙なことが起こっています。
一度目に読んだときは異常に天井がみしみしと鳴っていました。古い木造家屋なのでそういうこともあるでしょう。でもその日は風があるわけではなく、普通の静かな夜でした。
二度目に読んだのは貸出処理を行わず、図書館で読みました。読んでいる間中ずっと誰かが目の前に立っている感覚があったんですが、見渡す限り、かなり広い図書館の端まで見ることができましたが、誰もいませんでした。本を読むとあんなにもそこに誰かがいる感覚がしたのに。

つばめ館ポッドラック ~謎か料理をご持参ください~ 竹岡葉月

将来を嘱望された元柔道女子×料理男子

膝の故障で普通の女子大生になる道を選んだ沙央が入居したのはレトロな洋館アパートで、月1で料理持ち寄りのパーティが行われている。ある者は手の込んだ料理を、ある者はデパ地下の惣菜を持ち込み、料理が持ちこめない者は食事を彩る謎の提供を、と入居時に主催者の大家に説明された。
といってもパーティはメイン過ぎず、沙央が同期入居者で口さがない宗哉の手料理を食べ女子力向上のための教えを請い、大学生活を堪能する物語です。学生アパートで起こるあれこれ+日常の謎系ライトミステリ。パーティに持ち込まれる謎は消えた女の謎、暗号で女装男子も出ます。

派遣社員あすみの家計簿 青木祐子

コロナ禍の派遣社員の生活

Pixivのキャプション的注意ですが、本作は2020年以降コロナが理由で雇用関係で変化があった(特に派遣切りに遭った)人が読むと当時のフラッシュバックがあるかもしれないのでご注意ください。

寿退社後に婚約者に逃げられカードの支払いに苦しみ日雇いの仕事でなんとか生活を立て直すアラサーOLの話。2冊目ですがここからでも読めます。ちなみに「悪性のインフルエンザ」として表現されるパンデミック下、現実の2020年以降東京とリンクした物語です。
無職を脱して派遣社員としての職を得て、家計簿をつけていてもやっぱり金銭感覚がちょっとおかしいあすみが副業でウーバーイーツの配達員をはじめる「非正規はつらいよ」物語です。
あすみは男運は悪いけど仕事的には周囲の人の助けもあってたくましく生きていくので、そういう世情でも過度にしんどくはない、でも現実過ぎるので読めない人は確実にいるだろう物語です。

References

References
1 声優であることは知っているが普段どういう作品に参加しているのかいまいち存じ上げない