花は愛しき死者たちのために 柳井はづき
2021年ノベル大賞準大賞受賞作。
硝子の棺で横たわる死せる乙女エリス。彼女は決して朽ちることなくその美しさをとどめている。
エリスの棺がいつからあるのか、素性も没年もなぜ腐敗しないのかなぜ死んだのか、エリスに関することは一切不明だ。エリスの棺はカロンと名乗る黒衣の男によって運ばれ、金色の鍵とともに姿を見せる。
ある時は親を知らず先代の墓守とも死別した純粋な墓守の青年ヨゼのもとへ
ある時は成金貴族の子息セドリックのもとへ
薔薇を摘んで香水を作る家で育ったドロテの近くへ
カロンに絵のモデルを頼んだギルベルトのもとへ
エリスは何も語らず硝子の中でただ横たわるのみ。またひとりエリスに狂わされた者が命を落とす。
特に受賞作にして表題作「花は愛しき死者たちのために」は宗教に対して教科書程度の知識しかない一般人(わたしのことです)が考える「カトリックの世界観」で描かれていて、信仰が生活に根付いている物語だと感じた。
エリスにささげる花を買いに行ったヨゼが「花ならマルガが売っている」と言われて春を売る方の「花売り」マルガのことを知る。ヨゼは造花を買うためマルガのもとへ通うようになる。
とにかく物語を読ませる能力がすごく強い。
わたくしSound Horizonのファン歴19年目の人間ですが、Elysion~楽園幻想物語組曲~、特にエルの肖像がよく似合うと思います。ああいう感じが好きな人は多分好き。
2021年ノベル大賞受賞者 一問一答を読んだところ、「怪奇・幻想・耽美な雰囲気のある作品が好き」とのことで1期曲は相性がいいと思います。
それはそれとしてダークファンタジーが好きな人はぜひおすすめ。
後宮不美人 鈴生庭
これはちょっと帯のインパクトがすごいので読むことにしました。
本日7/11は、#二見サラ文庫 7月新刊??の発売日です。何卒、よろしくお願いいたします!
後宮不美人~イケメン皇子に復讐します~
鈴生庭??ゆき哉・装画――イケメン絶許https://t.co/hqUtYfzBxf
フェア情報??https://t.co/PmRLWjHq2l pic.twitter.com/wGNigsRP78— 二見サラ文庫 (@futamisalabunko) July 11, 2022
ちなみにまだkindle版はありません。
目が覚めたら可愛い女性が心配そうにのぞき込んでいた。そんなはずがない。自分は死んだはずなのだ。
コンプレックスの塊の正規は浪人中で、東大に入学したらクイズ王になって在学中に司法試験に合格して検事になると息まいていた。しかし改札を出て歩きスマホをしてしまっていたところ交通事故に遭い命を落とした。
状況を確認しているとここは姉に薦められてちょっとだけプレイした中華風後宮乙女ゲームの世界だと分かった。そして自分は今女性の体を得て、脇役キャラクターの婉婉(えんえん)として転生した。
婉婉は幼馴染のイケメン皇子に婚約破棄されて死を選んだらしい。正規は婉婉に代わって復讐することを決めた。とはいえ命を奪うわけではない。死にたくなるほどの辱めを与えたいだけだ。
婉婉=正規は宮女試験を潜り抜け後宮に潜入した。転生前の知識を使い手柄を上げて皇子に近づく機会を得たが、復讐を果たす前に暗殺未遂事件の犯人に仕立て上げられてしまう。身の潔白を果たすために正規は奔走する。
会社の裏に同僚埋めてくるけど何か質問ある? 夕鷺かのう
独立短編集のような、シリーズ3冊目。でも普通にこれ単独で読めます。わたしがこれシリーズものかと気づいたのもの人の感想を見て気づいたようなもので。
「めっちゃご利益ある縁切り神社」に駆け込むまでの話で、社畜系お仕事小説かと思えば叙述トリックみたいな短編もあってよくできたミステリを読んだ気持ちで読み終わりました。
でもひたすら恨みつらみを限界まで積み重ねた上での発露で、残酷なシーンもあるので、今仕事上で追いつめられるレベルで悩んでいることがある人、日頃モンスタークレーマーと接することが多い人にはちょっとおススメできない本です。
シリーズ1冊目:今日は天気がいいので上司を撲殺しようと思います (集英社オレンジ文庫) Kindle版
シリーズ2冊目:神さま気どりの客はどこかでそっと死んでください (集英社オレンジ文庫) Kindle版
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